はじめに
私たちは、普段聞こえることが当たり前のように思って、聞こえを意識せずに過ごしてしまいがちです。けれども、現在65歳以上の高齢者の5人に1人は加齢により聞こえが悪くなると言われています。すでに20年前の新聞記事に「高齢社会は難聴者社会」と警鐘が鳴らされていることからも、誰もが直面する問題と言えるでしょう。
聞こえは急に悪くなることもあると言いますが、聞こえに困り始め通販やお店で高価な補聴器を購入したのに、耳に合わなくて使えないままになっているという例も珍しくありません。
そんな時、事前に正しい知識を持っていると、有効に対処できます。例えば、補聴器にも処方箋があり、補聴器相談医(発行日現在、京都府北部で9名)や専門家によって聴力検査と聞こえや生活スタイルに合わせた補聴器の選定をしてもらう必要があること、リハビリ訓練による効果的な補聴器活用、定期的な補聴器の調整が必要であることなどです。「補聴器は、自身の聴力に合ったものを、リハビリ訓練によって自身の耳にしていく必要がある」との当事者の話は参考になります。
加齢による「老人性難聴」の他に、人生のある時期から聴力低下が生じた「中途失聴」の場合もあります。まだまだ地域の人々の理解は低く孤独に悩みがちな実態があります。
良好なコミュニケーションをとるための手立てや人が集まる場での適切な配慮の仕方など、この冊子を通して理解が進むことを願っています。
冊子を手に取っていただいた皆様に、「聞こえにくさ」に寄り添い、暮らしを支える理解者となっていただければ幸いです。
誰もが暮らしやすい社会になることを願って…
私たちは「耳のことあれこれ講座」を通して聴覚障害について勉強会を開いています。
「耳のことあれこれ講座」では「耳よりな話」の小冊子を活用しています。さらにDVDも活用しています。これらは「耳のこと相談運営委員会」で作成されています。
あなたの聞こえは大丈夫?「耳よりな話」
上の画像は作成した小冊子「耳よりな話」の表紙です。この中には以下の内容が含まれています。
- はじめに
- 聞こえのチェック①
- 聞こえのチェック②
- これだけは知っておこう
- 気付くポイント
- コミュニケーション
- 相談
以下は小冊子の簡易説明です。
はじめに
- 耳はなぜ2つあるの?(市民新聞に掲載された耳のことあれこれより抜粋)
- 有毛細胞(市民新聞に掲載された耳のことあれこれより抜粋)
- 合理的配慮を(市民新聞に掲載された耳のことあれこれより抜粋)
- 耳の各部位のお話
聞こえのチェック①
ここでは聞こえのチャックを4つの質問から聴力レベルを判断しています。
ご家族、友人の方へ
聴力低下は、自覚できないものです。本人が聞こえていると思っていても、異なる項目もあるかもしれません。一緒にチェックすることが大事です。
聞こえのチェック②
ここでは聞こえづらいと感じたときの良い選択、良くない選択をチャートにしています。
聞こえづらいと感じたときまず耳鼻科に行きましょう。聞こえの専門家が問題を教えてくれます。
補聴器を買ってもそれを付けてすぐに聞き取れるようになるわけではありません。トレーニングが必要となります。
これだけは知っておこう
- 相談はどこへ?
- 補聴器はリハビリが必要?
- 知っておきたい補聴器のこと
- 難聴の種類は?
- きこえの単位は?
気付くポイント
- 40db~60dbの人たち(聴力検査等級別分布図を用いてのおはなし)
- 耳鳴りのこと(滝野さん談)
- きこえで困っている人のそばにいるあなたへ(ステップ1聞こえの気づき)(ステップ2使ってみよう)(ステップ3会話の時の工夫)
コミュニケーション
綾部市手話言語の確立及び多様なコミュニケーション手段の促進に関する条例」をご存じですか?
多様なコミュニケーション手段とは?
- 要約筆記
- 手話
- 身振り
- 空書
- コミューン
相談
耳のこと相談に携わって
綾部市社会福祉協議会
上田智康
綾部市社会協議会の職員として「耳のこと相談」を平成24年から7年間担当し、聞こえについて悩みを持つ方々や関係団体と一緒に地域の聞こえに関する課題を解決すべく共に取り組みました。
「耳のこと相談」は地域の公民館へ出向き、アットホームな雰囲気で相談者をお迎えします。聴力測定や生活の困りごと相談をスタッフがチームとして行いますが、中でも難聴者協会のお二人が積極的に身振りをまじえてお話されていたのが印象的でした。
相談者やそのご家族は、座談会を通じて自分以外の聞こえについて悩む人が多くいることを知り、要約筆記があるので、その場の会話の内容を理解できます。待ち時間の雑談も要約筆記により、会話が通じる、伝えあえる喜びが側にいる私にも感じることが出来ました。話されている内容がわかること、自分の話を伝えてくれる人、聞いてくれる人がいることが大切なのだと改めて感じました。
検査では、自分の聴力を知り、聞こえの状態について相談し、補聴器の試用や調整により聞こえがよくなったことを実感していただきました。聴力検査の結果にショックを受けられる方もありますが、難聴者協会の方が自分の体験を伝え、補聴器の適切な使用と調整などにより、社会への参加をあきらめることなく、暮らしていくための方法や支援者の存在を伝え、励まし支えておられました。
相談会では3~10名程度の方が聴力測定や補聴器相談を受けられます。不安そうなお顔で来られた来談者様が、次第に明るい表情になられるのが嬉しく、名残惜しそうに帰られる際にはまたお越しくださいと声をかけました。
近年では、難聴者とその家族が暮らしやすい地域づくりを進めるため、出前講座を行い、聞こえのしくみや、支援制度の紹介、難聴者と会話するときに気を付けること等を伝えました。さらにその内容をたくさんの人に知ってもらうため、綾部市民新聞の協力を得て「耳のことあれこれ」の連載なども行ってきました。
デジタル補聴器やスマートホンでも使える音声認識システム、テレビの字幕放送など、聞こえをサポートする情報機器が発達しても、あくまでも聞こえを補助する道具です。一番大切なことは、多くの市民の理解が進み、難聴者にゆっくり話し、身振りや筆談などのいろいろな工夫が自然に行われることではないでしょうか?様々な工夫や配慮、理解が進み、環境や人、地域が変わり、難聴者が暮らしやすくなることを願っています。
耳のこと相談運営委員会の構成団体は7つです。
- 京都府中途失聴・難聴者協会綾部支部
- 綾部市民生児童委員協議会
- 綾部市障害者相談員
- 綾部市社会福祉協議会
- 綾部市要約筆記サークル「みみずく」
- いこいの村聴覚言語障害センター
- NPO法人わいわいネットなかま
どの団体でもお気軽にお問い合わせください!
こんな時に来てほしい!耳のこと相談会!
- 聞こえづらくなって困っている、何かいい方法を教えてほしい。
- 聞こえにくくなってきたが補聴器はどこでどのように作ればよいか。
- 補聴器は持っているが困りごとや相談がある。
- 聞こえにくくなる前に聞こえや補聴器のことなど知っておきたい。
- 家族・地域・職場など聞こえづらい方がいるので接し方などを教えてほしい。
- 地域ボランティアや役員等をしていて、聞こえづらい方とうまくコミュニケーションを取りたい。
耳のこと相談会って?いつ、どこで、している? ~綾部市と耳のこと相談運営委員会の共催~
いつ?どこで?
- 綾部市保健福祉センター(偶数月、年6回)
- 地域巡回(奇数月、年3回)
利用の流れ
- 事前に申し込みます。(申し込みがなくても受付時間内であれば利用できます。)
- 当日、会場に行きます。相談員や運営委員会がどんなことに困っておられるか伺います。
- ご希望の方は、聴力測定を行います。
- 補聴器店の職員に、補聴器について相談できます。
申し込みやお問い合わせは?
- 綾部市聴覚言語障害者支援センターや綾部市社会福祉協議会へ。
- お近くの民生児童委員まで。
いつでも相談できるところ
- 綾部市聴覚言語障害者支援センター
- 〒623-0011
- 綾部市青野町西青野18
- ワークショップサクラティエ内
- TEL(0773)40-1260
- FAX(0773)40-1261
- 開館日、時間:月曜日~金曜日(午前8時30分~午後5時)
- 相談は無料です。
- 民生児童委員
- ご相談はお近くの民生児童委員まで
- 綾部市社会福祉協議会
- 〒623-0012
- 綾部市川糸町南古屋敷5-1
- TEL(0773)43-2881
- FAX(0773)43-2882
- NPO法人わいわいネットなかま
- 623-0033
- 綾部市寺町上石28-6
- TEL・FAX(0773)21-2634
聴力測定をします。お気軽にお越しください。(耳鼻科受診前の目安になります。)
耳のこと相談DVD 「知ってください 耳のこと」
耳のこと相談運営委員会